玉弘堂の硯司

堀尾信夫Horio Nobuo

堀尾信夫
堀尾信夫は、戦後における赤間関硯制作の第一人者であった堀尾卓司の次男として下関市南部町に生まれ、大学卒業後、卓司に師事しその技を継承します。当初は卓司と同じ方向を目指していましたが、卓司の教唆により用の美を追求する日本工芸会に所属します。伝統的な硯制作を基礎としつつ、素材が石でありながらも、柔らかさや温もりを感じさせる面と線を活かした斬新な造形を特長とします。
昭和46年、日本伝統工芸展の初入選作、「ふね研」は従来の古典的な硯の概念を打破する簡素化された造形で注目されました。平成7年、第1回エネルギア伝統文化賞を受賞。平成11年、第46回日本伝統工芸展の日本工芸会奨励賞受賞作「無地研」は「実用本位の硯や古硯の様式観を払拭して、用美一体の硯の造形に新生面を拓いた力作である。」と評されます。平成14年、山口県指定無形文化財赤間硯保持者の認定を受けます。当時、硯制作部門における都道府県レベルでの無形文化財認定は初めてのことでした。平成20年、中国文化賞を受賞。平成21年、第56回日本伝統工芸展の日本工芸会会長賞受賞作「横置楕円研」は、「赤褐色材の暖かな質感を生かす静かな気品が漂う会心の作」と評され、現在、国立近代美術館に収蔵されています。平成26年、秋の叙勲で旭日双光章を受章。平成28年、第36回伝統文化ポーラ賞を受賞します。現在は日本工芸会山口支部の参与として、後進の指導に当たっています。
令和2年、喜寿を迎え、新たな作品作りに没頭する日々を送っています。
堀尾信夫作「なす研」堀尾信夫作「なす研」

堀尾信夫作「横置楕円研」堀尾信夫作「横置楕円研」
【経 歴】
1943(昭和18)年
下関市に生まれる
1967(昭和42)年
久留米大学卒業、父卓司に師事
1971(昭和46)年
日本伝統工芸展初入選(以後、入選38回)
1972(昭和47)年
西部工芸展受賞(以後、受賞2回)
1974(昭和49)年
日本工芸会山口支部入会
1975(昭和50)年
日本工芸会正会員となる
1981(昭和56)年
山口県立美術館にて父子展(「堀尾卓司・信夫」展)開催
第1回下関市芸術文化振興奨励賞受賞
1983(昭和58)年
山口県芸術文化振興奨励賞受賞
1984(昭和59)年
日本工芸会山口支部展受賞(以後、受賞4 回)
1995(平成 7)年
第1回エネルギア伝統文化賞受賞
1996(平成 8)年
下関市教育功労者表彰
1999(平成11)年
伝統工芸諸工芸部会展 鑑・審査委員(以後、7回)
第46回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞受賞(無地研)
山口県選奨(芸術文化功労)受賞
2000(平成12)年
第47回日本伝統工芸展鑑査委員(以後、6 回)
2001(平成13)年
第36回西部工芸展審査委員
2002(平成14)年
山口県指定無形文化財赤間硯保持者に認定される
工芸会山口支部副幹事長となる
2003(平成15)年
下関市立美術館作品収蔵。同館にて「硯司 堀尾信夫の世界」展開催
梅光学院大学博物館「赤間関硯―歴史・硯司の視点から」
2008(平成20)年
中国文化賞(中国新聞社)受賞
2009(平成21)年
第56回日本伝統工芸展 日本工芸会会長賞受賞(横置楕円研)
2011(平成23)年
第58回日本伝統工芸展 特待者となる
天皇皇后両陛下の山口国体行幸啓に係る山口県献上品謹作(長方研)
2013(平成25)年
第24回伝統工芸諸工芸部会展 鑑審査委員長
やまぎん史料館「堀尾兄弟二人展」開催
2014(平成26)年
秋の叙勲において旭日双光章受章
2015(平成27)年
国立近代美術館に作品収蔵(横置楕円研)
第62回日本伝統工芸展 諸工芸部会鑑査主任
2016(平成28)年
第36回伝統文化ポーラ賞 地域賞受賞
2019(令和元)年
第66回日本伝統工芸展 鑑・審査委員

堀尾卓司Horio Takuji

堀尾卓司
堀尾卓司は堀尾坂次郎の次男として明治43年、下関市南部町で生まれました。卓司の師匠は名人と言われた大森珏泉堂と崎川羊堂です。珏泉堂は関東大震災後の大正12年、東京から帰郷して玉弘堂に出入りするようになり、当時少年だった卓司に硯の魅力を熱く語ります。珏泉堂は「自分の後を継ぐのはあの息子だ。」と近所の人たちに語っていました。大正15年、長府中学校(現豊浦高校)在学中、後に店の職人となる崎川羊堂が、目の前でみごとな龍の硯を彫り上げるのを見て、硯職人として自立を決意します。昭和11年、実在工芸美術会第1回展に「無地研」を出品して入選します。これはかつて珏泉堂から聞いた飛行機の宙返りのイメージを元に、フランス絵画展で見たモンドリアンの抽象画から啓示を受けて作成したもので、卓司は「自分は抽象硯のパイオニアだ。」と語っていました。
昭和15年、並の職人のままではいけないと、戦時体制が深まる中、上京して彫刻の大家新田藤太郎に師事し、デッサンや彫刻を学びます。卓司の同級生、阿山勇介は当時の卓司を「博物館や上野動物園、植物園に出かけては毎日目の色を変えてデッサンに励んでいた。」と回顧しています。昭和17年、第5回文部省美術展覧会に入選。翌昭和18年には国の「工藝技術保存資格者」に選ばれます。硯の分野では全国で3人の内の一人でした。昭和23年、彫刻家の植木茂、画家の名井玲、阿山勇介らと共に下関美術家協会を設立します。 多くの展覧会に出品しましたが、日展入選は前身の文展を含めて9回入選。日展が硯を公募の対象から外してからは、日本新工芸家連盟の設立に参画し、日本新工芸展に5回入選しています。赤間関硯を現代に再興した功績は高く評価され、昭和58年文部省地域文化功労者表彰を受けました。
昭和61年惜しまれつつ亡くなりました。享年76歳でした。
堀尾卓司作「双体」堀尾卓司作「双体」

堀尾卓司作「蘭花研」堀尾卓司作「蘭花研」

堀尾卓司作「華」堀尾卓司作「華」
【経 歴】
1910(明治43)年
下関市に生まれる
1927(昭和 2)年
このころ大森玨泉堂の影響を受け、また、崎川羊堂に師事して硯司となる
1936(昭和11)年
第23回商工省工芸美術展入選 同年から実在工芸美術展に3回連続入選
1940(昭和15)年
上京して彫刻家の新田藤太郎に師事する
1942(昭和17)年
第5回文部省美術展入選「えんどう」 以後、1979 年の改組第11回日展入選「果」まで9回入選
1943(昭和18)年
工芸技術保存資格者となる
1947(昭和22)年
昭和天皇中国御巡幸に際し、山口県献上品謹作「柿」
1948(昭和23)年
第4回日本美術展(日展)入選「千成ほほづき」(下関市立美術館蔵)
1950(昭和25)年
第6回日展入選「累柿硯」(山口県立萩美術館・浦上記念館蔵)
1951(昭和26)年
第7回日展入選「びわ研」(下関市立美術館蔵)
1953(昭和28)年
3月:山口県文化奨励賞受賞   第9回日展入選「さんきらい」(下関市立美術館蔵)
1955(昭和30)年
下関市社会教育功労者表彰
1956(昭和31)年
第12回日展入選「蘭硯」(山口県立萩美術館・浦上記念館蔵)
1957(昭和32)年
日ソ国交回復記念日本工芸美術展入選「おしべ」 (山口県立萩美術館・浦上記念館蔵)
1958(昭和33)年
天皇皇后両陛下御西下に際し、山口県献上品謹作「菊花研」
1959(昭和34)年
皇太子御成婚に際し、山口県市長会献上品謹作「巻葉研」
1960(昭和35)年
第3回日展入選「華」(下関市立美術館蔵)
1966(昭和41)年
第9回日展入選「双体」(山口県立萩美術館・浦上記念館蔵)
1970(昭和45)年
日本万国博覧会に出品
1977(昭和52)年
下関市教育文化功労章受章
1978(昭和53)年
山口県選奨(芸術文化功労)受賞
1979(昭和54)年
改組第11回日展入選「果」二面硯(下関市立美術館蔵)
第1回日本新工芸展入選「すみすり」(山口県立萩美術館・浦上記念館蔵)
山口県立美術館に作品収蔵
1980(昭和55)年
第2回日本新工芸展入選「つわぶき」(下関市立美術館寄託)
1981(昭和56)年
第3回日本新工芸展入選「実」(下関市立美術館蔵)
山口県ふるさとづくり功労章受章 「堀尾卓司・信夫」展(山口県立美術館)
1982(昭和57)年
第4回日本新工芸展入選「果香」(下関市立美術館寄託)
1983(昭和58)年
第5回日本新工芸展入選「橋」(下関市立美術館寄託)
文部省地域文化功労者表彰
下関市立美術館に作品収蔵
1984(昭和59)年
第6回日本新工芸展入選「双池研」(下関市立美術館寄託) 日本新工芸家連盟退会
1985(昭和60)年
山口放送善行者表彰
1986(昭和61)年
5月18日死去(76歳)
下関市立美術館にて「堀尾卓司展」(10 月19 日~ 11 月3 日)

髙原祐二Takahara Yuji

髙原祐二
山口大学経済学部卒業後、行政職として下関市役所に入所。
昭和62~63年頃、山口県立美術館や堀尾硯工房で堀尾卓司、信夫父子の硯作品を目にする機会があり、石でありながら木彫のような温もりを感じさせる造形に驚嘆する。
平成元年、堀尾信夫に師事。
公務の傍ら、公募展に出品を重ね、平成12年に日本伝統工芸展に初入選、同年、日本工芸会山口支部に所属。
現在(令和2年)までに18回の入選を重ねている。
髙原祐二作 無地研「掌」髙原祐二作 無地研「掌」
【経 歴】
1957(昭和32)年
大分県竹田市に生まれる
1980(昭和55)年
山口大学経済学部卒業
1989(平成元)年
堀尾信夫に師事
1990(平成 2)年
西部工芸展入選(以後10回入選)
2000(平成12)年
第47回日本伝統工芸展入選(以後入選18回)
2003(平成15)年
日本工芸会正会員となる
下関市芸術文化振興奨励賞受賞
2004(平成16)年
山口伝統工芸展 朝日新聞社賞受賞
2006(平成18)年
山口伝統工芸展 山口朝日放送賞受賞
2007(平成19)年
山口県芸術文化振興奨励賞受賞
2011(平成23)年
第23回伝統工芸諸工芸部会展 文化庁長官賞受賞
2013(平成25)年
第24回伝統工芸諸工芸部会展 東京都教育委員会賞受賞
2016(平成28)年
山口伝統工芸展 山口朝日放送賞受賞
2017(平成29)年
日本工芸会山口支部 監事
2019(令和元)年
第27回伝統工芸諸工芸展 鑑・審査委員
2020(令和 2)年
日本工芸会諸工芸部会 幹事

中村一姫Nakamura Ichihime

中村一姫
島根大学総合理工学部地球資源環境学科で岩石の研究をした理系女子。
大学4年の2008年11月に堀尾硯工房を訪問した折、その柔らかさ、温もりを感じさせる造形に惹かれ、大学卒業と同時に堀尾信夫に師事。
女性らしい感性あふれる作品作りは、西部伝統工芸展で3度の受賞、下関市芸術祭での最高賞の受賞など、将来が期待されている。
中村一姫作「方陵研」中村一姫作「方陵研」
【経 歴】
1986(昭和61)年
下関市に生まれる
2009(平成21)年
島根大学総合理工学部地球資源環境学科卒業
山口県指定無形文化財赤間硯保持者 堀尾信夫に師事
2012(平成24)年
第47回西部伝統工芸展 朝日新聞厚生文化事業団賞受賞
2014(平成26)年
第49回西部伝統工芸展 九州朝日放送賞受賞
第8回下関市芸術文化祭美術展(美術部門) 大賞受賞
2015(平成27)年
第50回記念西部伝統工芸展 朝日新聞厚生文化事業団賞受賞